リングは彼女に


 あまりにも唐突だった。俺はその一言のせいで、体中がまるでコンクリートのように固まってしまった。


 そして状況を理解するに従って、今度は意識が遠のいていく、さらに全身の力が抜けて、危うく手に持っているフォークを落としそうになった。


 俺は飛び去っていきそうな意識の端を掴んで、なんとか手繰り寄せる。


「なんで? 別れるなんて……今までうまくやってきたじゃないか、俺たち」

「ええ、確かにうまくやってきたわよね」

「だったら、なんで?」

「ごめん、和人といても、なにか、なんて言うのかしら……悪いけど、つまらないのよね」


「つまらないって? 一体なにがつまらないんだ。俺になにか不満でもあるのか?」


「そういうわけじゃないのよ。そうね、あなたはどうしても、マニュアル通りって感じがして、私には何か物足りないのよ」


「マニュアル通り……」俺は唸った。


「私はね、もっと刺激的な恋愛がしたいの」


「刺激って、お前」


「ごめんなさい。でも、もう決めたの。あなたが私のためを思うなら、別れて」由美はきっぱりと言った。
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