リングは彼女に
「ほんと、寒いってんだよ。なんで外で待たされないといけないんだ。通行の邪魔だろ俺たち」
隣りで田渕が腕組みをしながら口を尖らせて言う。
田渕は同じ野球部だったやつで、クラスで一番仲が良かった男だ。ガタイが良くて、見た目はいかついが、話してみるとなかなかおもしろい。
高校時代から筋トレが趣味だったのだが、それを今でも続けているらしい。一見すると柔道でもやっているように見えるだろう。角刈りの頭を見ると、丸刈りだった野球部を思い出す。
「ああ、向井さんはいつも遅れてくるんだから、店の中で待ちたいよ。いくらなんでも寒すぎる」俺が田渕にそう答えたとき、人数確認が終わったのか、長谷川が声を上げた。
「これで全員集まったみたいですね。店に入りましょう」