リングは彼女に


「実は、来月結婚するんだ。はは」


 そう言うと照れくさそうに頭を掻き毟る。俺は頭を拳銃で撃ち抜かれたような衝撃を受けた。そして、ガクッと肩を落とした。


「マジか? お前が結婚? 怜奈さんと? これは世も末だな……」


 俺はちらっと向かい側のテーブルに目をやった。容姿端麗でスタイルのいい怜奈さんが笑顔で向井さんら女性グループと話をしている。

 田渕の彼女だ。高校時代から付き合っている二人だから、交際期間十年にもなる息の長いカップルだ。


「そんな事言ったってよ。もう準備も進んでるし。俺は幸せすぎてよー。死にそうだよ」


 新しくきたビールに口をつける。今日は何杯でもいけそうだ。


「おい、田渕。めでたい事には変わりない。乾杯しよう」


 ビールが半分になったジョッキを田渕に向ける。すると田渕はまた笑顔になった。
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