リングは彼女に
「お、おい。成瀬か? いや、あのよ、俺、どうしよう、どうしたらいいのかなぁ」
田渕の口ぶりには明らかな動揺が含まれていた。ははぁ、これは吉田さんから連絡があったんだな?
電話越しに慌てふためく田渕の姿を想像すると、それだけで微笑ましい。
「どうしようって言われても……まず、何があったのか説明してくれないと分からないよ。落ち着いて話してくれ」
受話器から荒い息が漏れてくる。一度、二度、大きな呼吸が繰り返されて、それから田渕が喋りだした。
「ひとまず、そうだ。あーと、部活終わって、家に帰ってきて、風呂に入って、それから……トイレで」
その先は聞きたくない。咄嗟に言葉が出た。
「いや、ちょっと待て。簡単に、何があったのかを話してくれ。一から十まで話さなくていいから」