リングは彼女に
なんだそりゃ。思わず拍子抜けしてしまった。
「それで、田渕は何をそんなに焦ってるんだよ」
「明日結果が分かっちゃうわけだろ。俺はそれが怖くて仕方が無くて……」
今度は俺の方がため息をついた。これは少し勇気付けてあげる必要がある。
「あのなぁ田渕、もし振られるとしたら、もう電話で断られてるはずだと、俺は思う。その方が顔を合わせなくても済むし、ハッキリと言えるからだ。そうじゃないって事は、明日良い返事が待ってるって事だと思う」
「そうかなぁ……」田渕は自信なさ気に呟く。
俺は間髪入れずに言ってやった。「そうだよ。そうに違いない」と言っても、正直自分の発言に絶対の自信があるというわけでもなかった。
「そうか、ああ、少し落ち着いてきたよ。すまん成瀬」田渕はだいぶ気が楽になったようだ。
「ああ、どういたしまして。明日が勝負だ。今日はゆっくり休んだ方がいい」
「わかった。電話して良かったよ、それじゃ、明日」そう言って電話は切れた。
閉じた漫画を開き、再び読み始めるが、どうも集中出来ない。田渕の想いはちゃんと届いたのだろうか? 少し疑問に感じる。
だって、あんなビデオの内容じゃあ……