リングは彼女に
「吉田さん」田渕が恥ずかしそうに喋りだした。
「俺、どうやら、あなたの事が好きになっちまった、いや、好きになってしまったようです」声が徐々に小さくなる。
俺は空いている方の手の指先を上に向けるジェスチャーで、声を大きくするように促した。
「お、おお」田渕も気付いたみたいだ。
「それで、ビデオレターとして想いを伝えようと思います。是非、見ていてください」
田渕は、両腕を大きく前に突き出した。それを上空に振り上げて、また下に降ろす。
「吉田怜奈さんに愛を込めてー! 三・三・七拍子! それ! いち、に、さん……」
夕陽を浴びながら、三三七拍子を舞う。右腕を振り上げ、左手を回し、蟹股になってしゃがむ。
一連の動作は、全て田渕が考えたものだ。本人は真剣そのものである。
「吉田さん! 俺と付き合って下さい! お願いします!」夕暮れの校庭に田渕の大声が響き渡った。