リングは彼女に


「お前は幸せもんだな」俺がビールを飲みながら言うと、田渕は相変わらず快活な声で笑った。


「成瀬もはやくいい嫁さん見つけるんだぞ。由美さんともまだ終わったわけじゃないんじゃないか?」


「どうかな……彼女の意思はかなり固いみたいだったけど……」思い出すだけで悲しくなる。


「そうか、それは残念だ。それにしても、あと、この中で独身のやつは……」田渕と共に辺りを見回すと、長谷川が目に入った。



「成瀬と……長谷川だな」田渕は言ってから、しまった。という様子で口を塞いだが、既に遅い。


 気付きたくない事に気がついてしまった。



「すまん成瀬」田渕は頭を下げるが、しかし、全くフォローになっていない。




 その後は、ずっと気分が沈んだままの同窓会となってしまった。




 やっぱり……来なきゃ良かった……か?
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