リングは彼女に
「なに?」
丁度そこまで話した時、鰻丼が到着した。大塚さんは箸を割って丼に手を付ける。
「それで、なんで別れたんだ?」
「それが、刺激の無いつまらない男だと言われまして……」
一瞬間が空き、大塚さんの箸が止まった。よく見ると、肩がわなわなと震えている。そして鰻を口に含んだまま、声を立てて笑い出した。
「くっはははは。お前、それは別れて正解だよ! そんな、女につまらないなんて言われちゃお前、あ、鰻が冷めちまう」再び彼の箸が軽快に動き始めた。
「な、なにがそんなに面白いんです? 俺、未だに何故彼女に振られたのか良く分かりません……何故なんでしょうか?」
丼と口に箸を行き来させながら、彼は答えた。
「そりゃあ簡単だよ」
丼から箸を離し、それを俺の方に向けた。
「それはな、つまらないとか、飽きたとかじゃない。他に理由がある」