リングは彼女に


「ちょっとすみません」

「はい?」店員は顔をしかめながら答える。

「この店で待ち合わせをしているんですけど、一人で来ている女の人はいませんか?」

「ああ」店員は思い出したように声を出した。「そういえば、一人で来店された女性の方がいましたね……」


「本当ですか? 彼女はどこの席にいますか?」


 やっと理那に追いついたかと思うと、ホッとした。俺は続けて言った。「すみませんが、席まで案内してもらいたいのですが……」



 店員は申し訳なさそうに答えた。


「あのー、もうこの店にはいませんよ」
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