リングは彼女に
「は?」
「その女性の方ですけど、先ほど出て行かれたんですよ。もう店仕舞いですし――残念ですけど」そう言いながらも、顔は全然残念そうではないし、同情をしているとも思えない。
「分かりました。ちょっと連絡してみます……」俺は適当に言った。
店を出てすぐのところで、理那に電話を入れた。理那は四回目のコールで電話に出た。
「もしもし、理那? 一体どういうつもりなんだ?」
「んん、ごめん。もうお店が閉まるって言われたから出てきたの。ラストオーダーだったし、でも連絡するべきだったね。ごめんなさい」彼女は何故か息が荒い。
「はあ……でも、今どこにいるんだ? もう遅いし、いい加減帰ろうよ」俺は本音を漏らした。
「うん。でも最後にもうひとつだけ行っておきたいところがあるの」
――しばしの沈黙があり、それから彼女は喋りだした。