リングは彼女に
「実はさ、屋上に行きたいの」
「屋上? 屋上って、この建物のかい?」慌てて聞き返す。
「そう、このセントラルタワーの一番高い所まで行きたいの」理那は落ち着いた声で言った。冗談を言っているようには聞こえない。
「どうして? だって、無理だよ。屋上なんかには行けっこない」
屋上に行けないというのには、それなりの根拠があった。関係者でもない一般人の自分たちが屋上に行けるようなルートは無いだろうし、もしあったとしても、既に営業時間終了間際となっているので、時間が無い。
それに、無理に上に行こうとした場合、警備員に何を言われるか分かったもんじゃない。その点を踏まえても。やはり屋上へ行くのは無理だ。止めておいたほうがいいだろう。