リングは彼女に


 ドアノブに手を掛けて回してみようとしたが、鍵が掛かっている。


 ドアノブのすぐ上に赤色をした円筒形のガラスカバーがあり、それを外さなければ、鍵は開けられない。



 もし警備員に見付かった時、なんと言おうか、言い訳は思いつかない。


 しかし、今思いつく限りでは、これ以外に方法がない。俺は覚悟を決めた。後ろに振り返り、辺りに誰もいないことを確認してから、意を決してガラスカバーを取り外した。

 続いて、鍵を開ける。それからドアノブを回すと、あっけなくドアは開いた。


 すぐにドアの内側へ体を滑り込ませ、ノブを引っ張りドアを閉める。ものの数秒間の出来事だが、かなり緊張した。こめかみ辺りに嫌な汗が流れる。
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