リングは彼女に
第8章
万華鏡の世界
万華鏡の中身を粉々に砕いて、散りばめたような世界だった。
美しく、しかしどことなく寂しさを湛えている世界。俺が住んでいる世界が、こんなにも美しかったなんて……
ドアを開いた途端に、夜の街が視界を支配した。
圧巻。それ以外の言葉は見当たらない。
そして言葉を失い。ただただ景色を眺めていた。
今まで見た事が無いほど遠くまで見渡せる。一番遠くの方は霞んでよく見えないが、海があるようだ。薄らと展望台の灯りが見える。
そうだ、景色を眺めている場合じゃない。理那だ。理那はいるのか?
屋上は思っていたよりも広い。
貯水タンクや電子制御盤などがある。それらからは沢山の管やコードが伸びており、屋根に突き刺さっている。
それらには触れないように気をつけて歩き回ったが、どこを探しても理那の姿はなかった。