リングは彼女に
「なんだ……やっぱり此処にもいないじゃないか……」俺はガックリとうな垂れて、もう、帰ってしまおうと思った。
だが、今上ってきた階段を、もう一度降りるのかと思うと、本当に辛い。体力的にも限界かもしれない。
そんな事を考えている時、ふと屋内へのドアの隣りに梯子がある事に気が付いた。屋上へ出たときは死角となっていて気が付かなかったものだ。
梯子は5メートル程で、すぐに登り切れそうな高さだった。
そこはまだ確認していない場所だった、一応確認しなければならない。そこを除いた所は全て調べたはずだ。
俺は梯子に手をかけた。
梯子は金属製のため、かなりの冷たさを帯びている。掌の皮膚がくっ付いてしまいそうだったので、手を袖の中に引っ込め、直接梯子に触れないようにして昇った。