リングは彼女に

彼女の贈り物



「ええ? そんな事しちゃ駄目だよ」


 見ると、その紙束には見覚えがあった。先日、理那が詩を書いていた紙だ。


 量は更に増えていて、相当な枚数がある。


「これは私からこの街へのクリスマスプレゼント、みんなに届けたいメッセージ」


「なぜ、そんなことを?」


 理那は考え込んで、言葉を選ぶようにして答え始めた。


「私はさ、こう見えても結構ツイてない女で……いや、不幸って言うのかな? クリスマス.イブ、それとクリスマス。どっちの日も好きな人と過ごしたことが無いの……」


 理那は一歩踏み出して、左腕に抱えた紙束の中から数枚の紙を抜き取り、手を離した。


 理那の詩が書かれた紙は、風に乗り、夜の街の中へ消えた。それらを目で追うことは出来ない。



「それに、私の誕生日は今日。クリスマスなんだよね……ほんとは言いたくないんだけど、最近は誰も私の誕生日を祝ってくれない。こういう日だから、みんな予定が入っているんだと思う。お母さんも、お父さんも、仕事が忙しいって、それっきり……それに、こうやって年を重ねるごとにさ、色んな事を考えちゃうの、きっと他の人達は、自分以外の人達は幸せなんだろうなあって、今まで思ってきたの。きっとこんな寂しい思いをしているのは私だけだろうって……」
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