リングは彼女に


「理那……よく聞いて欲しい」少しずつ、腹の中から絞り出すように言葉を繋げる。


「いいかい。今年は今までとは違う。俺がいるじゃないか。だから意味の無い日なんかじゃない。今日は、とても重要な日なんだ」


 理那は聞いているのか聞いていないのか、ただ俺に背を向けて紙束を減らし続けている。俺は気にせずに続けて言った。



「理那」


 少しの間を置いてから言った。


「少しずつだけど、君のことを好きになってきている。適当な気持ちなんかじゃ無い。俺と、今度は本当の意味で付きあって欲しい。これからも、君と、一緒に過ごしたいんだ。傍にいて欲しいんだ」


 理那の背中から目を離さずに、はっきりと言った。間違いなく、彼女に聞こえているはずだ。



 しばらく、言葉が詰まり、沈黙が続いた。それから再び口を開いた。「駄目かい? お願いだ。今、答えて欲しい」
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