リングは彼女に


 理那が振り返り、こちらに歩いてきた、俺のすぐ前に立ち止まり、俺の目を覗き込む、少しの間見つめ合うような状態になった。


 緊迫感のある一時が流れる。


 彼女は強い力を持った目をしている。俺は目を逸らすことが出来ない。


 永遠とも感ぜられる一瞬の後、ようやく理那が口を開いた。


「今日、正確に言うともう昨日になっちゃったけど……あなたを散々振り回してしまった……ほんとうにごめんなさい」


 理那は申し訳なさそうな表情を見せる。


 俺は彼女の顔を見て深く頷いた。


 理那は、俺が頷くのを確認した後、再び口を開いた。


「でも、それには意味があるの」

「意味?」


「ええ、ごめんなさい。あなたがどれだけ私を信じてくれるかを知りたかった。理不尽なくらい迷惑をかけてしまったけど……それは、あなたに対して、私の感情が変わってしまったから。最初は、違った。ただ、誰かとこの日を過ごす事が出来たら、それだけで良かった。それで良かったんだけど……」



 理那は俺から目を逸らした。踵を返し、夜景の方へと体を向けた。
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