リングは彼女に


「これを、君に渡すわけにもいかない。だからといって、俺が持っている理由は、もうない……これを渡したかった人は、既に俺の前にはいない。だから、これは、必要のないものなんだ」



 空を見上げると、半分に欠けた月が、ぼんやりとした光を放っていた。



「さようなら」



 そう小さく呟き、右腕を大きく振り上げ、野球でホームへと送球する時のように、指輪を思い切り投げた。



 指輪は放物線を描き、月の光を一瞬反射させ、きらりと輝いた後、静かに視界の中から消えた。




 まるで流れ星のようだった。
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