リングは彼女に


 理那が囁く様に言った。「本当に、良かったの?」


「これで良かったんだ」俺は静かにそう答え、理那を抱きしめた。


「ふふ」理那は小さく笑い声を上げた。


「意外と潔いところも、あるんだね」


「そうかな?」

 そう言うと、理那は急に俺から離れた。


 そして右手を差し出す。握手をするようにしてその手を握り締めた。



「よし、じゃあ今日から本当の意味で付き合い始めよう。きっと、これからもっと、あなたの事が好きになる。そういうのも、いいかもしれないね」



「本当?」ついつい聞き返してしまう。


「本当だよ、良かったね和人くん。それじゃあ、もう帰りましょう。一階まで競争だよ」



 言うが早いか、理那は早速梯子のところまで走り出した。
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