リングは彼女に
結局、勝負は理那が勝った。
俺は上りの時に殆ど力を使い切ってしまったようだ。下半身、特に膝から下に力が入らない。
非常階段で一階に着いて外に出てみると、そこは屋内駐車場であった。理那はそこに出ることを知っていたらしい。
「それにしても、疲れたね。和人くん遅いんだもん。ペース狂っちゃったよ」
「仕方ないじゃないか。全速力で駆け上ったんだから、体が付いていかないのも当然だよ」
「ははあ、またそういう言い訳をするわけだ」
理那は不敵に笑った。
「でも奢りの約束は守ってもらうからね、今頃文句言わないでよ」
俺は頷いて答えた。「分かってるよ」
「うん。分かっているなら、よろしい」理那は微笑んだ。
「そう言えば和人くん。汗でシャツが濡れてるんじゃない? その格好のままだと風邪引いちゃうよね……一回家に帰ろうか?」
「そうだね。このままだと気持悪いし……あ、あとクリスマスプレゼントも家にあるから、それも取りに行こう」
「本当? 楽しみだな」