リングは彼女に


「なんとか言ったらどうなの?」理那はまくし立てる。


 長谷川は死にかけの金魚みたいに口をパクパクとさせるだけで、言葉が出てこない。それを見て、俺が仲裁に入らなければまずいと気が付いた。


「おい、理那、やめた方がいい。こんなところで、早く渡らないと信号が変わっちまう」


 既に信号はチカチカと点滅を始めていた。


「理那! はやく」俺は急かした。


「信号? 分かった。じゃああんた、ちょっとこっちに来なさい!」


 理那は、長谷川の包帯でぐるぐる巻きになっている腕を鷲掴みにし、歩道のほうへと引っ張り出した。


 長谷川は苦痛に顔を歪ませたが、相変わらずされるがままだ。
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