リングは彼女に
その時、由美に話しかけられた。
「和人、これはどういうこと? この女の人は誰?」
彼女は混乱している様子だ。
だが、俺はもう彼女と話をしたくない。「悪いけど、話しかけないでくれ。君とはもう話したくない」
まさか長谷川と由美ができているとは思わなかった。
長谷川は高校時代から女癖の悪い奴だったが、まさか由美と不倫をしていたとは。
その事実に気が付いた途端、心底馬鹿らしくなった。由美にも、長谷川にも、それに気が付かなかった自分にも。
なんとか信号が赤になる前に歩道に辿り着く事が出来たが、理那の行動は理解することが出来ない。
彼女はいまだに長谷川を睨み付け、今にも殴りかかりそうな勢いだ。
「理那。俺がさっき変な事を言ったからこんな事をしたのか?」理那は小さく首を振った。だが、俺は無視して言葉を続けた。
「確かに、長谷川は俺の同級生だ。それに由美は俺の元彼女だ。だからと言って、君がこの二人に危害を加える理由はないだろう?」
理那はそんな説得をまるで聞いていない。
俺の発言を受けてか、長谷川はようやく口を開いた。