リングは彼女に


「そ、そうですよ! これはもうあなたがたには関係のない話のはずです! いい加減、止めてもらえませんか!」


 長谷川がそう言った時だった。


 理那の鉄拳が長谷川の顔面に沈んだ。


「ぐぼぉ!」という間抜けな声を上げて長谷川はばたんと倒れた。


「ちょ、ちょっと!」


 由美は勿論、長谷川に駆け寄る。


 そんな二人を見ながら、理那は声を上げた。

「もう私の前に現れるなって言ったでしょ! この馬鹿野郎!」


 理那は続けて言った。



「私と別れたと思ったら早速別の女と付き合いやがって! いい加減にしろ!」


 理那は長谷川にそう吐き捨てた。


 そして俺の腕を掴んで言った。「もうこんな馬鹿には付き合ってられない。早く行きましょ」


 心からすっきりしたのか、晴れ晴れとした表情をしている。


「わ、分かった」


 周りに人だかりが出来始めていたので、早くこの場を離れたかった。理那の言葉に素直に従うことにする。



 俺も由美に何か言ってやりたかったが、余計な事は言わない方が良いのかもしれない。野次馬の間を割って、その場を去った。
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