リングは彼女に


『メリークリスマス!』声と共に、サンタクロースが飛び出した。


 彼女は顔に当たりそうになる人形を、驚く程良い反射神経で、瞬時に避けた。


 理那は悲鳴を上げる事も無く、ただ一瞬喉が詰まったような声を出しただけだった。それからオルゴールのメロディーが流れ出した。


「はは、びっくりしたかい?」


 俺は満面の笑みでそう言うと、地面に落ちた人形を拾い上げた。それを理那に手渡そうとした時だった。


「馬鹿! びっくりしたじゃない!」理那の平手が飛んだ。パチンという小気味良い音が店内に響き渡る。


 その音にバーテンダーも反応したのか、チラリとこちらを見る。




 結局鼻眼鏡の効果は無しだ。
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