リングは彼女に
そんな時に、由美の事が脳裏を過ぎった。まだ、遅くはないのじゃないだろうか?
そうだ。まだ遅くない。俺はもう別れるのは嫌なのだ。それに、振られて酒に溺れるなんて、典型的な馬鹿だ。
俺はその道筋を辿っている。だが、まだ他の道が残されていないわけではない。
今の酔った勢いでもう一度電話を掛けてみようという気になった。今でなければ、彼女はもう戻ってこない気がする。
ポケットから携帯電話を取り出して、リダイヤルボタンを押した。まだ彼女は起きているだろう時間だ。
電話に出てくれるだろうか? 無心に祈りを捧げた。神でも悪魔でもいい、俺を助けてくれ。