リングは彼女に
意外なことに、短いコール音の後、すぐに由美は電話に出た。予想外だったが、精一杯の平静を装う。
電話を掴む右手が意識せずとも固く握られてしまう。
「由美か? 俺だけど」喉の奥から声を絞り出す。
「和人……なんで電話してきたの?」受話器から軽く吐息が漏れる。
「なんで? だって納得出来ないだろ。俺はまだ終わったとは思っていない」酒のせいか、口調が荒々しくなる。
「仕方が無いじゃない……私はもうあなたとは付き合えないの、本当にごめんなさい」
「だから、それが分からないんだ。俺はまだ君を、君のことを愛している。君も俺のことを愛してくれていると思っていたんだ。違ったのか?」
「そうね、確かに愛していた。私もあなたのことを愛していた……」
少しの沈黙が流れる。