リングは彼女に


「なんでよ……」

 女は右手で熱心にメールを打ちながら、左手にはしっかりとグラスが握られている。


 そういえば、彼女も俺に負けず劣らず、相当な量を飲んでいる。

「……何よ、何が気に入らないの? 私が何したっていうの?」

 独り言は止まらず、目も据わっているようだ。顔も真っ赤だし、相当酔っているように見える。


 だが、俺は気にせずに飲み続けることにした。


「じゃあ、次はこのグラッド・アイってやつ、お願いします」

「かしこまりました」

 バーテンダーがシェーカーを手にし、カクテルを作り出した。華麗な手捌きだ。そんなに激しくシェイクして、よく中身が飛び散らないものだと感心した。


「どうぞ、お待たせいたしました。グラッド・アイでございます」

 グラスが音も無く置かれた。グラッド・アイ、緑色がとても鮮やかなカクテルだ。しかし、見る人によっては、この深緑が毒々しい色に映るのかもしれない。


 少し飲んでみると、なかなかカクテルも良いな、と思った。他のも飲んでみようか。
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