リングは彼女に
そう、あれは夏に二人で遊園地に行った時だ。
あの時は確か、観覧車に乗って夜景を楽しんでいた。
地上には米粒みたいに小さな人が沢山いたが、あの時、あの空間には二人だけしかいなかった。
隣りにいる由美に「綺麗な景色だね」と言った。
すると彼女は「そうね、とても綺麗……ほら、あれ見て」と四角い観覧車の窓から、お化け屋敷の方向に指を指した。
俺はお化け屋敷なんかに何があるのだろうと思って目を凝らしていると「そっちじゃないよ」と彼女は笑っていた。
再び、彼女の指先を見ると、お化け屋敷の上空を指している事に気が付いた。
「なに? なにもないよ」そこはただ、星空が広がっているだけに見えた。
「もうすぐ八時になるから、よく見てて」