リングは彼女に
「君、それ何飲んでいるの? その緑のカクテル」女は、俺の隣りの席へと移ってきた。
「え、ああ、これですか。グラッド・アイというカクテルです」
「そう。じゃあ、それ奢ってよ。いいでしょ?」
「……」思わず、ぽかんと口を開いてしまった。
なんだ、この女は……意味が分からない。
初対面の人間に対してこの態度。
しかも、『じゃあ』ってなんだ、どこをどうしたら『じゃあ奢って』になるんだよ。
しかし、俺は酔っ払っているせいか、なんとなく挑戦を受けたような気がした。いつもなら断っている筈だが、その挑戦、買ってやる。
「分かりました。バーテンダーさん。この人に俺と同じものを」半分やけになって頼んだ。
「お客様……よろしいのですか?」
バーテンダーは、こんなグデグデになった失礼な見ず知らずの人に酒を奢るなんて信じられない、という様な驚きと呆れが混合した表情を浮かべている。
「ええ、構いません。お願いします」