リングは彼女に
おもしろい顔
「それにしても、君、おもしろい顔してるね」
「おもしろい顔?」
女はくすくすと笑っている。相変わらず失礼だと思った。
「おもしろい顔って、どこが?」
「だって、目から涙の痕が口元まで……塩分が足りないの?」
何を言っているんだ、こいつ。
それにしても、涙の痕が残っているのには気が付かなかった。
やっぱりトイレで確認しておけば良かった。
さっき、外で歩きながら泣いていた時の痕が残っているのだろうか、俺はスーツの袖で両方の目元から頬までを拭った。