リングは彼女に


「和人です。成瀬和人」

「字は? どういう漢字を使うの?」

「成功の成に瀬戸内海の瀬、昭和の和に人間の人です」

「苗字はどうでもいいよ。覚えるの面倒だから。そう、和やかな人、和人くんね。覚えた。じゃあ和人くん。次はゴールデン・ドリーム奢ってよ」



 だから、なんで『じゃあ』なんだよ。



「たはは」思わず、笑ってしまった。へんな女だ。



「いいですよ。すいません。ゴールデン・ドリーム二つお願いします」

 このときには既に、彼女に対する警戒も解けていた。奢ってと言われても、別に悪い気はしない。金が無いわけでも無かった。


 由美のために下ろしておいた金があったからだ。
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