リングは彼女に


「それに、付き合ってるのに他の女に惚れるなんてどういうこと? 腹が立つと思わない? ほんとに失礼! 絶対あの男ぶん殴ってやる!」


 がんと拳をカウンターに打ち付ける。その音に反応してバーテンダーが理那を見た。俺は彼女をなだめた方がいいと思った。


「俺もそう思いますよ。付き合っているのに、他の女に目がいくなんて、信じられないです。でも、殴るっていうのは……どうかと思いますけど」

「そうかな? むかついたら殴るってのが正直でいいと思うけど。それが普通じゃない? でも最低だよね。こういう別れって……それにしても奇遇ね、同じ日に振られるなんて。お互いツイてないね」


「ツイてない……」


 今日振られたのは、単にツイてなかっただけなのだろうか。


 いや、そんな筈はない。きっと何かしらの理由があるはずだ。


 恋愛はギャンブルとは違う。


 俺にも、由美にも何かしらの問題があったのだ。
< 46 / 228 >

この作品をシェア

pagetop