リングは彼女に
「それに、付き合ってるのに他の女に惚れるなんてどういうこと? 腹が立つと思わない? ほんとに失礼! 絶対あの男ぶん殴ってやる!」
がんと拳をカウンターに打ち付ける。その音に反応してバーテンダーが理那を見た。俺は彼女をなだめた方がいいと思った。
「俺もそう思いますよ。付き合っているのに、他の女に目がいくなんて、信じられないです。でも、殴るっていうのは……どうかと思いますけど」
「そうかな? むかついたら殴るってのが正直でいいと思うけど。それが普通じゃない? でも最低だよね。こういう別れって……それにしても奇遇ね、同じ日に振られるなんて。お互いツイてないね」
「ツイてない……」
今日振られたのは、単にツイてなかっただけなのだろうか。
いや、そんな筈はない。きっと何かしらの理由があるはずだ。
恋愛はギャンブルとは違う。
俺にも、由美にも何かしらの問題があったのだ。