リングは彼女に
「和人くん、あまり深く考えない方がいいよ。結局、その人とは縁がなかったって事なんだから。よく言うけど、人間諦めが肝心。とても大事な事だよ」
「……そうですかね」
そう考えると、少し気が楽になった。だが、未練がないというわけではない。
「よーし、じゃあカラオケにでも行きましょう! きっと歌ったらスッキリすると思うよ」
またお得意の『じゃあ』が出た。なんだか雲行きの怪しい展開になってきた。こんなに酔っ払ってる状態でカラオケなんて、行くべきところでは無い。
「カ、カラオケですか? いや……歌は苦手で……」彼女の言葉にどぎまぎしてしまった。カラオケは本当に苦手なのだ。
「いいよ別に。私が歌うから」理那はきょとんとした表情で答える。まるで初めから自分だけが歌おうと思っていたかのようだ。
「そ、そうですか」
相変わらず、さっぱりとした人だ。
「はい、決まった!」
理那は、すこぶる楽しそうだった。それにしても、カラオケか……カラオケには嫌な思い出が……