リングは彼女に


 それというのも、昔、合コンでカラオケに行った時、どんなに頑張って歌ってもキーが外れてしまい、仕方が無かった。

 そんな俺に男友達からブーイングが上がった。かと思うと、その波が女性陣にも伝わり、ブーイングの嵐。

 連中はふざけていただけなのだろうが、それ以来、カラオケに行くのが嫌になって、たとえ行っても何も歌わずに聞き手に回るようにしていた。


 軽いトラウマのようなものだ。


「……分かりました。でも、俺は歌わないですからね。それじゃ、行きましょうか」

「うん。その前にもう一杯飲んでからね。バーテンさん、XYZ(エックスワイズィー)ひとつ」


 まだ飲めるのか……俺は呆れながら彼女を見つめていた。
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