リングは彼女に

レストラン「オ・ルヴォワール」



 由美と約束した時間の十五分ほど前に、レストラン『オ・ルヴォワール』に到着した。


 吐き出す息は白く、空の色はますます黒が濃厚になっていく、その半面、周囲を彩るビル街の照明は、光を増していく。

 プロポーズを切り出すのだから、いつもの待ち合わせとはやはり違う、妙に緊迫感がある。

 ドキドキして息苦しく、一分一分が非常に長く感じる。もう何時間も前から此処で立ち尽くしているような錯覚を覚えた。


 どのように話を持っていこうか、本当に難しい。

 このような問題に答えはない。

 世界中の、沢山の男たちが悩んできた問題だ。簡単に答えを出せないのは当然である。常に自分を信じて、正直に切り込んでいくしかないのだ。


 それにしても、突然プロポーズなんてしたら、彼女はどう思うのだろうか。もしかしたら、既に気が付いているのかも知れない。


 それからしばらく待つと、由美は予定通りの時間に来た。
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