リングは彼女に

 カラオケキングと書かれた黒いウインドブレーカーを着た客引きがいる。理那はその客引きの男に話し掛け、案内を頼んだ。


「お二人様ですね? 何時間のご利用でしょうか?」

 客引きが携帯を操作しながら、聞いてくる。


「そうね、二時間でいいよ。そんな長く居る気ないから。いいよね?」

「いいですよ。俺は歌わないんだし」

「はい、かしこまりました。では、お店の方までご案内いたしますので……」


 客引きの誘導に従い、店まで移動する。彼の話によると、近くに店舗があるらしく、五分程度で着くらしい。


 移動している間、理那はずっと料金の交渉をしていて、客引きのあからさまに困った顔をしていたのが、なかなかおもしろかった。
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