リングは彼女に

 俺たちは一番曲数の多い機種の部屋に入った。六人部屋で、二人ではかなり広い。しかし、窓がないせいか、多少息苦しさを感じる。


「なに歌おうかな」理那は歌本のページをパラパラとめくっている。

「なに歌ってもいいですよ。俺は歌うのは苦手だけど、聴くのは得意なんです」

「聴くのが得意って……ほんとおもしろい事言うね。じゃあ、これにしよっと」


 理那は歌本の選曲番号をリモコンに打ち込んだ。それをカラオケの機械本体へと送信する。デジタル表示板には6631‐21と入力された。


 少ししてディスプレイにアーティスト名と曲名が表示される。『The Blackbelt』という曲だ。だが、はっきり言って、知らない曲だった。


「理那さん。どんな歌なんですか?」

「やっぱり知らないか、でも結構有名だよ。簡単に言えば、HIPHOPってやつ」

「へぇ……そうなんですか」

 曲のイントロが流れ始める。なかなかスローテンポのトラックだ。トランペットが鳴り響く。



 そして理那が歌いだした。
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