リングは彼女に


 滑らかな舌使いで、畳み掛けるように言葉を連ねる。

 それは、歌というか、語り口調であった。

 なるほど、ラップっていうやつだ。しかも、めちゃくちゃ巧い。国会議員の熱のこもった主張のように、よく口が回っている。


「やりますね、ラップ歌う人なんて初めてですよ」

「そう? あ、ウーロンハイ頼んでくれる?」

「あ、分かりました」


 備え付けのインターフォンでフロントに注文を入れる。ついでに、小腹がすいていたのでチャーハンとエビピラフも頼んだ。
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