リングは彼女に
 運転手は不思議そうに答えた。


「だってお客さん。まだお連れさんが乗っていませんよ」


「え?」

 開いているドアから身を乗り出して外を見ると、そこには理那が立っていた。頭には雪が積もっている。


「はは、また会っちゃったね和人くん。ていうかほんとは後ろから付いてきてたんだけどさ」

「いや、付いてきたって……」


 驚いた、考え事をしていたせいもあるが、付いてきていたことになど全然気が付かなかった。


「悪いけど、私も乗るね。寒くてしょうがないもん。このままじゃ雪だるまになっちゃう」

 理那は体についていた雪を払い落とし、タクシーに乗り込んだ。そしてドアが閉まる。


「それじゃ、出発しますね」

 運転手はハンドルを切り、勢いよく車を出した。
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