リングは彼女に

ホテルにて1



 俺はなぜここにいるんだろう。


 よくわからないが、成り行きで仕方が無いのだろうか?


 水の流れる音が聞こえる。

 彼女がシャワーを浴びているからだ。

 俺はベッドの隅に腰掛け、色々とあらぬことを考えている。一歩間違えればただの妄想だ。


 それよりも、何故このようなことになったのか、タクシーでしっかりと断っておくべきだったのだろうか?



 さっきはタクシーに理那が乗り込んできただけでも、かなり驚いたのだが、驚きはそれだけでは終わらなかった。


 俺は理那に家がどこにあるのかを聞いてみた。自分の事より、相手を先に送り届けるのが礼儀だと思っていたので、理那を先に帰らせた方が良いのではないかと考えたのだ。



 しかし、理那は「家がない」と言い出した。
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