リングは彼女に


 本当に痛い。

 俺のしたことも、腹の痛みも。


 理那に飛び掛った時、彼女の蹴りが的確に俺の腹を貫いたのであった。


 それにしても、もの凄い痛みだ。


 タンスの角に小指をぶつけたときの痛みが、そのまま腹全体に広がったような感じ。寝たままでよくもそんなに強烈な蹴りが出来るものだ。


「私はねー、キックボクシング習いながら独学でコマンドサンボやってるの。横に寝たりしたら、関節技くらわせるから」


 そうなのか、と頭では言葉の意味を理解しながら、やはり意識は下腹部に向いてしまう。やめときゃ良かった。俺は心底後悔した。


「ご、ごめん。ちょっと調子に乗ってしまって……」


 息も絶え絶えにそれだけ言い、腹を押さえながらゆっくりと立ち上がる。


 すると、理那もベッドから降りて立ち上がった。


 俺の顔に理那は顔を寄せて忠告する。
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