リングは彼女に
「えっ?」両手を確認すると、右手にフォーク、左手にナイフを握っている。「これって、逆だっけ?」
「そうよ、全く逆。正しくは右手にナイフ、左手にフォークよ」
慌ててナイフとフォークを持ち直した。こんな大切な日に、恥ずかしい姿を見せてしまった。事前にしっかりとテーブルマナーの勉強をしておくべきだった。
「ごめん。間違った」
「もう、しっかりしてよね。今日はデートだからいいけど、仕事で接待とかあったら、誰も注意してくれないよ? 大事な時のために練習しておかないとね」
今がその"大事な時"なんだけど……心の中でげんなりした。