リングは彼女に


 ここに来るといつもこの人に会うのだが、話が合うので悪い気はしない。


 彼は、俺の座っている隣に腰を下ろす。


「いつも疲れるねえ君。俺はまた今日も外回りさ。あっち行ったりこっち行ったり、散々歩かされて、こんな安月給じゃやってられないよなあ。そう、こんな給料が安くなったのも全部不況が悪い。不況が。なあ、そうだろう? 景気対策だかなんだかしらんがね、政治家がなにしようと一向に景気はよくならないじゃないか。今の総理もこんな状況でよくのんびりやってるもんだよなあ。支持率もとんでもないことになってるし。このままじゃ日本は終わりだねえ」


 そこまで一気に喋ると大塚さんは缶コーヒーの蓋を開けた。グビグビと喉を鳴らしながら美味そうに飲んでいる。
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