リングは彼女に
それは、野球選手だった。
ただ漠然となりたかったわけではない。今思えば、昔はかなりの野球馬鹿だった。
小学、中学と野球部に属し、進学先に選んだ高校も野球が強くて有名なところだった。豊富な設備があり、屋内練習場もあるので、毎日毎日、日が暮れるまで練習に明け暮れた。
そして、努力の甲斐もあってか、一年の終わり頃になって、めでたくレギュラーを獲得した。
ポジションは外野レフト、肩には自信があったし、満足していた。
それからも夢である甲子園出場を目指してがむしゃらに練習を重ねた。
しかし、無理がたたってか二年の春に肩を壊してしまったのだ。不幸であったとしか言いようが無い。
医者には当分野球は出来ないであろうと宣告され、目の前に広がっていた未来が音を立てて崩れていった。
気が付けば、レギュラーからも外されていた。