リングは彼女に


 それからは、ずっと野球が出来ないままの状態で引退を迎えてしまった。


 うちのチームは甲子園にも行けず予選敗退が続いた。最後の夏を迎えたときはテレビの前で号泣してしまった。


 生き生きとグラウンドを走り回る選手たちが羨ましかった。


 そして憎かった。


 もしかしたら、肩を壊していなければ、甲子園の舞台に立てていたのかもしれない。今でも後悔の念が残る。




「どうした? 急に黙っちまって。ほら、煙草の灰が落ちそうだぞ。それに、もう休憩も終わりの時間だ。午後も頑張って仕事に励もうじゃないか」


 大塚さんは、あくびをしながらさっさと行ってしまった。俺も仕事に戻らなければならない。煙草を灰皿に押し付けた。
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