◇ 私の彼氏 。
─ ギシ ギシ
お やっと起きたかな。
「柚子ねぇ、おはよ」
「おはよ。ゆーちゃんのアラーム煩い」
「ん、そう?俺全く聞こえない」
リビングから2人の会話が聞こえてくる。
あの騒音が聞こえないなんて、あいつおかしいんじゃない。
普段アラームで起きない私が起きるんだから相当だ。
あ、私専用の歯ブラシまだある‥
「璃玖、邪魔」
「ね、コレ私の?」
「無視かよ。あぁ、そうだけど?」
「何であるの?」
「気分」
「ふーん」
ちょっとだけ、嬉しかったりした。
歯ブラシ立てに立ててある4本の歯ブラシ。
ゆーちゃんのと柚子ねぇの、それから柚子ねぇの彼氏さんのと私の。
捨てるのが面倒だったから、って理由でもそれはまだゆーちゃんが本気で恋をしてないという証拠だと思ったから。
一夜限りの付き合いしかしてないんだな、ってホッとしたと同時に早く前に進んでほしい、とも切実に思った。