恋迷路〜マイゴノコイゴコロ〜
「ってか、俺、アンタが来る前からずっとこの上にいたけど?」
ポンポンと木の幹を触りながら、智晴先輩はそう言った。
…確か、一番最初に智晴先輩と会った時も、智晴先輩、木から落ちてきたんだよね。
「先輩って、木登り得意なんですか?そうには見えませんけど。」
少しの皮肉をこめてそう言うと、先輩は眉間にシワをよせたあと、私を見て笑う。
…その笑顔が怖いんですけど。
「なに、アンタ俺のことどう思ってるワケ?」
「冷徹文化系ドS…」
全部言いそうになって、私は慌てて口をつぐんだ。
「ふーん…。」
ニヤリと口角を上げる智晴先輩は泣く子も黙りそうな威厳をまとっていて。
「…ごめんなさい。」
思わず謝ってしまった。