ROMANCE
お皿を流し台に置くと再び食卓に戻る
「なあ」
アタシは「え?」と言いながらまたお皿を運んでキッチンへと向かって、そして食卓に戻る
コップに手をかけ「アイスコーヒー飲む?」と聞くと「ああ」と答えるから、またアタシはキッチンへ行って、アイスコーヒーを入れて戻ってきた
今度はふきんで卓上を拭く
じっとしない事に焦れたのか、片付ける手を突然つかまれた
「お前、いっつもああやって寺野に弁当やってんの?」
アタシの手に重ねられる直也の手の大きさと押さえられた力にちょっとたじろぐ
直也の表情を確認すると、とがめるような、怒ってるような、不安げなような…
「今日が、はじめて」
手が解放されてアタシは再び卓上をふきはじめると、お母さんがおきっぱなしにしたアクセサリーボックスに動揺した手があたって、中身を散りばめながらそれが落下した
「あーあ、もうこんなとこにおきっぱなしにするから・・・」
アタシはしゃがんで拾う
直也が立ち上がってアタシの向かいにしゃがみこむと一緒に拾ってくれる
こまごまと拾ってはケースに入れながら、直也がゆっくりと口を開いた
「土曜日・・・試合見に来い」
「え?」
手を止めて直也を見た
つけっぱなしのテレビから笑い声が響く
「寺野と出かけんなよ」
「寺野と仲悪いの?」
直也がそういうことをいうのが珍しくて思わず聞いてしまう
またちょっと不愉快そうな視線を寄越してくるからちょっと身を引いた