ROMANCE
学校について一緒に校舎へ入る
「でも・・・ちょっと秋山がうらやましくてさ」
「なんで?寺野の方がよっぽどもててんじゃん」
「だってさ、俺はもてるために必死だもん」
ちょっとすねた口ぶりだけど、その言葉の内容に笑ってしまった
「あんなに無愛想で感謝のことばも述べないやつが、毎日弁当やら夕飯やら作ってもらってるなんて、むかつくだろ?」
そっか、そう思うんだ
アタシは、女の人がいない生活は大変だろうなって、助けてあげたいだけの気持ちだったけど
直也の教室はもう目の前
お弁当を渡さなきゃ
開きっぱなしの教室のドアの前から直也を探す
(居た・・)目があった
「けなげでいい女だよ、宇佐ちゃんは」
優しい声でそういわれて、アタシは真意を確かめるように寺野に視線をうつす
寺野は微笑むとやわらかくアタシの頭を撫でた
直也が立ちあがって近づいてくるのが見えて、アタシは寺野からさっと体を離すと教室に一歩踏み入れる
「これ、お弁当」
顔をあげられなくて、受け取る直也の指をみつめた
「・・明日の試合、見に来いつったけど、やっぱ来るな」
頭上から冷たい声でそう告げられてアタシは思わず顔をあげたけど、肩を押されて教室から追い出されドアをしめられた
そこに寺野の姿はもうなくて、立ち尽くしてると「みずき!どうした?」と登校してきたゆかがアタシの顔をのぞきこんだ
なんでそんなにイラついてるのかわからないけど、アタシにあたらないで…
直也のご機嫌ナナメはなおりそうにもなかった