A線上の二人
コンクールって事は、ヴァイオリンだよね?
ヴァイオリンという事は、それは音楽コンクールなんだよね?
音楽の世界はよく解らないけれど、コンクールで入賞って凄い事なんではなかろうか?
『都合が悪ければ、後日でもいいが』
この冷静さは何?
「あー……。もしもし達哉くん」
『何?』
「なんでもっと喜ばないかなぁ?」
『……それどころじゃないからな』
何だかよく解らないけれど……。
まぁ、あまりにも喜びが大きいと、実感湧かない人もいるしね。
そもそも……
喜びを露にしてる達哉くんて、何だか想像つかないし。
「じゃ、お祝いをしようよ」
『迎えに行く』
「へ?」
『買い出しがあった』
「買い出しって、何? 達哉くんの家でやるの?」
『もう、あらかた作ってあるんだ』
達哉くんのご飯、おいしいものね。
「…………」
って、
違ぁ〜うっ!
どうして、お祝いを受ける立場の人がご飯作ってるの?
そういうもの? そういうものなの?
何か違わない?
何か違う気がするんだけれど。
『後、20分くらいで着くから』
「わ、解った」
とりあえずオーケーを出して、通話を切った。
やっぱり、達哉くんて掴み所がいまいち判らないなぁ。
「あ、そうだ。ごめん、今日さぁ……」
と、顔を上げて眉を寄せる。
「何。その含み笑い」
ニヤニヤと訳知り顔で笑っている舞香。
「男?」
「え……? だから、遠縁の親戚……」
「そんな満面の微笑みで?」
言われて、鏡を見る。
「…………」
うん。
どうして微笑んでいるんだろうね。
「解った解った。今日はキャンセルね」
テキパキ化粧品をしまう舞香。
「え……」
「もう、男と会うなら会うで、ちゃんと言ってよね」
バックを持ち直し、手を振られる。
「あの……」
「じゃあね」
そう言って、舞香は去って行った。
「………まぁ」
男は男なんだけどね。